昭和60年(1985)に、国書刊行会から出版された少年少女向け時代小説の名作、大佛次郎著
/絵・伊藤幾久造の『日本の星之助』(復刻版初版・2700円)である。ハードカバー全268
ページの単行本である。また、本書の原本は昭和13年に刊行されたもので、満州事変以降の戦
争、日本の大きな国難にあった。いつの世も無垢な少年たちに、〝清く正しく、明るく健やかに育
て!〟といった、著者の熱き心意気があふれる物語となっている。
【著者紹介】
大佛次郞(1897~1973)は、神奈川県出身のヒューマニズムあふれる作家である。大長編シ
リーズの 『鞍馬天狗』 またの名は倉田典膳をはじめ、 『赤穂浪士』 『水戸黄門』 『からす組』
『ドレフュス事件』 『ごろつき船』 『日蓮』 『乞食大将ー後藤又兵衛』 『鼠小僧次郎吉』 『大楠公』
『照る日くもる日』など、弱者側から体制批判をし、社会の矛盾と正義の意味と意義を登場人物
にそんたくして炙り出している。
【物語】
今は昔の話である。いつの頃かは、つまびらかではないが、日の本には唐天竺にまで商いをする
名うての大船頭がいた。主人公の星之助少年は、瀬戸内の飾磨港を代表する大船頭・鍵屋太郎
兵衛の伜であった。星之助は、物心がついた時には、病の母と死別し父子と久しく暮らしていた。
だが、その父とも音信がとれなくなった頃に、渡り船大工の岩太郎と少年は知り合う・・・・。
星之助は、母から受け継いだ慈愛と父から仕込まれた勇気を懐に、父を探しに行く旅を決意す
る。だが、当時の瀬戸内から九州一帯には、海賊が待ち伏せして、星之助少年は一時期囚われ
の身となるのだが・・・・。
ある時、勇気を奮い起こし、星之助少年は海賊のアジトから逃げ出す。危機一髪、追手をかわした
矢先に親切な大工の父と娘に助けられる。やがて、成長した星之助少年は、自らを不幸に陥れた
海賊を退治しなければ、この瀬戸内の人々の安寧を実現することはできない。その心根は周囲の
武士を奮い起こし、海賊成敗の決戦を挑むことになる。この先の結末がおもしろいのだか、それは
本書を手に取り、読んで見てのお楽しみじゃ! 伊藤幾久造の挿絵が随所に光る。伊藤は、大佛
次郎の『鞍馬天狗』に欠かせぬ挿絵家で、本書には物書きと息のピッタリあった友誼が感じられ
る。
本の状態は、本体は美本に近い古書「上」だが、天地の微黒(インクのシミか?)カバーの表紙上
部のシワ小キレは貼付写真で御確認して頂きたい。あまりに神経質な方は御遠慮して下さい。発
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(2022年 3月 9日 12時 44分 追加)値下げ金額を、間違えて入力して
おりました。訂正しお詫び申し上げ
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